ストーリー

ここは、私立桜台大学付属高校、略して桜高の生徒会室。
皆口青葉は悩んでいた。
季節外れの転校生、渋谷利雄のことで悩んでいた。
喧嘩百段、なんて呼ばれる彼が、普通になりたいと言い出したこと。
そんな彼のせいで、せっかく築いたこの学園での私の立場が危ういこと。
これから起きるであろうトラブルの数々、それを想像しながら、
はぁ、とため息を漏らしてしまう。
その瞬間、鳴り響くサイレン。
少し遅れて「やっちまった!」と叫び声。
利雄が火災報知器を誤作動させたのは。
…火を見るより明らかだ。
はたして彼は「普通」を手に入れられるのだろうか。
そんなことを思い悩み、もう一度「はぁ」とため息をついて。
青葉はゆっくりと、生徒会室を後にした。
「これは、卒業一か月前という、季節外れの転校生、喧嘩百段渋谷利雄が、
普通の高校生になるために私が災難を受けるという、とても理不尽な物語である」